1. >
  2. 最新記事
  3. >

海外不動産を法人化するメリットとは?個人所有との違い・注意点を解説

PropertyAccess Team |

監修:海外不動産税務の専門家 大木宣幸
(公認会計士・税理士・宅地建物取引士)
International CPA Firms・大木国際会計事務所 代表



「海外不動産を購入して家賃収入を得たい。個人だと所得税も高そうだし法人を作ったほうがいい?」
「海外不動産の家賃収入が増えてきた。今から法人化したほうがいい?」

海外不動産への投資を検討中の方も、すでに海外不動産をお持ちの方も、不動産を法人として購入・保有するとどんなメリットがあるのか気になる方も多いはず。

「法人化」とは、本来、個人事業主として事業を行っている方が、株式会社などの会社を設立して、その会社に事業を引き継ぐことを指します。

ここでは、「法人化」を広く捉え、個人が日本法人を新たに設立して、あるいは既存の日本法人に、海外不動産を所有させるケースを中心にお話します。

この記事では特に、海外不動産を個人ではなく法人で所有することで、税金・経費・資産管理などにどんなメリットがあるのかを解説します。

最後まで読んで、ご自分のケースは法人化を検討すべきか、判断する材料を手に入れてください。

なお、海外不動産を法人で所有することのデメリットについては、こちらの記事で詳細をご確認ください。


▶関連して読む
海外不動産を法人化するデメリット4つとは?個人所有との違い・注意点を解説 


1.海外不動産を法人で所有するメリット 


海外不動産を法人で所有するメリットには以下の5つがあります。


(1)個人資産と投資リスクを分離できる


法人を所有主体とすることで、法人と株主個人を法律上分離し、原則として法人の事業上の債務・責任を法人に帰属させることができます。 

個人が海外不動産を所有する場合は、基本的には不動産投資に関する権利・義務がその個人に直接帰属します。

一方で、株式会社などの法人が不動産を所有する場合、法人と株主は法律上別の人格です。

法人を所有主体にすることで、現地の管理会社との契約や不動産事業に伴う借入、トラブルや損害賠償といった不動産投資に関連する権利・義務を法人という別の主体に集約し、個人の財産と切り離すことができます。

株式会社や合同会社は、原則、有限責任です。

有限責任とは、出資者(株主)は、会社の債権者に対して出資額以上に金銭的な債務を負わないことを言います。

だからといって、会社の債務を一切負わなくて良いというわけではありません。

 個人保証や役員個人の責任などがある場合には、個人にも責任が及ぶ可能性があります。

たとえば、法人が金融機関から融資を受ける際に、代表者が個人保証をしている場合だと、法人が返済できなくなれば、保証契約に基づいて代表者個人が責任を負うことになります。

(2)利益を法人内に留保し、再投資に活用できる


法人が得た利益は、法人に帰属します。 

そのため、すぐに株主個人へ配当などの形で移さず、法人内に資金を残して(内部留保)、次の不動産取得や事業投資に充てるという運用が可能です。 

日本法人が海外不動産を所有する場合、不動産から得られる利益は法人の所得として法人税等の対象になります。 

法人にかかる税負担は、法人の規模や所得金額、所在地などによって異なります。 

法人税だけを見ると、資本金1億円以下の一定の法人では、所得800万円以下の部分に15%、800万円超の部分に23.2%の税率が適用されます。 

実際の税負担は、法人税に加えて地方法人税、法人住民税、法人事業税なども考慮する必要があります。 

一方、個人として海外不動産を保有する場合、海外不動産から出た利益は、個人の所得となります。 

個人も同様に、その資金を次の不動産購入に使うこともできますが、まずは個人に帰属する所得として個人所得税の対象となります。 

個人所得税は累進課税のため、他の所得を含めた所得水準によって税負担が変わります。 

個人所得税の税率は5%〜45%で、これに東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保するために設定された復興特別所得税が加算されます。 

さらに住民税も考慮すると、所得税・復興特別所得税・住民税を合わせた限界税率(*)は、概算で約15.1%~55.9%となります。

(*) 所得が増えたときに、その増えた分に対して適用される税率のこと 

したがって、法人に利益を残して再投資に回す方が、税負担が少なくなる場合があります。 

ただし、法人の利益を役員報酬や配当などによって個人に移す場合には、個人側でも課税が生じるため、「法人税率が低いから法人のほうが必ず有利」とは限りません。

法人内に利益を留保して再投資するのか、個人に移して生活資金などとして利用するのかによっても、税務上の結果は変わります。


(3)個人とは異なる税務上の取り扱いを受ける


法人の場合、個人では制限されている「海外中古木造住宅の減価償却による損益通算制限」が適用されません。

2021年(令和3年)以降、個人が一定の国外中古建物について、短い耐用年数(簡便法など)を使って大きな減価償却費を計上し、その結果生じた不動産所得の赤字を、給与所得など他の所得と損益通算することができなくなりました。


▶関連して読む
海外不動産の減価償却はどうなる? 4つのポイントを専門家が事例つきで解説!


法人の場合は、耐用年数を経過した中古物件を含め、海外不動産の減価償却費の計上が引き続き可能です。

さらに、不動産を売却した場合の損益は、個人が分離課税なのに対して、法人は法人全体の損益と通算できます。 


つまり、個人に比べて、法人の方が損益通算できる範囲が広いと言えます。

ただし、個人の場合、譲渡所得にかかる税率は不動産の保有期間によって異なります。
・長期譲渡所得(所有期間が5年超):所得税15.315%(*)、住民税5%
・短期譲渡所得(所有期間が5年以下):所得税30.63%(*)、住民税9%

(*)基準所得税額に2.1%を掛けて計算した復興特別所得税(2027年分以後は防衛特別所得税及び復興特別所得税)を含む 

したがって、長期保有した物件を売却した際の譲渡所得に対する税率は、復興特別所得税込みで20.315%(所得税15%・住民税5%・復興特別所得税を含む)です。

個人で長期保有した場合、法人税の実効税率より低くなることを頭の片隅にとどめておくとよいでしょう。

▶関連して読む 
海外不動産にかかる売却時の税金は? 3つのポイントを専門家がくわしく解説! 

(4)将来の資産承継・事業承継を検討しやすい


将来的に子どもなどへ資産を承継する場合、不動産そのものを承継ではなく、 法人の株式を承継という形を検討できます。

なぜなら、日本法人が不動産を所有している場合、個人が直接所有しているのは不動産ではなく、その法人の株式だからです。

一方で、個人が海外不動産を直接所有している場合は、その不動産そのものが個人の資産になります。
もちろん、非上場株式の株式評価が必要ですので、法人化しただけで相続税が有利になるわけではありません。

ただ、複数の不動産を保有する場合には、法人という一つの器に資産をまとめることで、将来の資産承継を検討しやすくなるという点は、法人化の重要なメリットのひとつといえるでしょう。

 

2.個人所有と法人所有の違い


これまでに見た個人所有と法人所有の違いを整理してみましょう。


法人個人

個人資産と投資リスクを分離できる(有限責任)

〇
ただし、例外あり

✖

利益を法人内に留保し、再投資に活用できる〇
ただし、利益を法人から個人に移す場合、個人側で課税あるため要注意
✖


個人とは異なる税務上の取り扱いを受ける

・損益通算の範囲が個人に比べて大きい

・不動産の保有期間による譲渡益にかかる税率に違いはない

・総合課税と分離課税

・海外中古木造住宅の減価償却による損益通算不可

・長期保有物件の譲渡益にかかる税率は低めに設定されている

将来の資産承継・事業承継を検討しやすい

相続の対象は株式

会社の規模や株主構成、不動産の取得時期などが株式の評価額の判定に影響を及ぼす。


相続の対象は不動産


3.海外不動産の法人化が向いているのは


 本業の収入が高く、海外不動産からも大きな利益が出て、その利益を生活費に使わず法人内に残して、次の投資に回す予定のある方です。

海外不動産から出た利益を、役員報酬や配当の形で法人から個人に移そうとすると、個人側でも課税がされますので、トータルで考える必要があります。


4.海外不動産の法人化を検討する際の注意点


3章、4章で見てきた通り、法人化すれば必ずメリットがあるわけではない、という点です。

すでに既に個人所有している不動産を法人へ移す場合にはコストにも注意が必要です。

単に法人を作ればいいというものではないからです。

個人から法人に物件を移転することになるので、個人側で不動産譲渡所得が発生し課税がされたり、名義変更や登記にかかる費用が発生したりします。

4章で述べた、法人の利益を個人に移す場合と同様に、全体像を把握しておくことが必要です。

海外不動産の法人化には、法人設立・維持費用や税務・会計上の負担など、いくつかのデメリットもあります。

詳しくは「海外不動産を法人化するデメリット」の記事で解説しています。

▶関連して読む 
あとでリンクを貼る

まとめ

今回は、海外不動産の法人化について、以下の4つのメリットをご説明しました。

(1) 個人資産と投資リスクを分離できる
(2) 利益を法人内に留保し、再投資に活用できる
(3) 個人とは異なる税務上の取り扱いを受ける
(4) 将来の資産承継・事業承継を検討しやすい

海外不動産を法人で所有すると、個人資産と不動産投資に伴うリスクを分離できるほか、利益を法人内に留保して次の投資に活用しやすくなります。

また、法人では個人とは異なる税務上の取り扱いがあり、海外不動産の減価償却費や売却損益を法人全体の所得計算に反映できる点もメリットです。

一方で、法人化したからといって、必ず個人所有より税負担が軽くなるわけではありません。

特に、法人の利益を役員報酬や配当として個人に移す場合には、個人側でも課税される点に注意が必要です。

すでに個人で所有している物件を法人へ移す場合は、譲渡に伴う税金や諸費用なども考慮する必要があります。

さらに、海外不動産では物件所在地国の税制や外国税額控除など、日本以外の税務も検討しなければなりません。

そのため、法人化するかどうかは、収益額だけでなく、利益の使い道や今後の投資計画、保有期間などを踏まえて判断することが大切です。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

PropertyAccessでは実務経験豊富なスタッフによる「無料の個別相談」を実施しています。

海外不動産投資に関してご希望の情報や、不動産投資を始めるうえで気になる点がありましたら、お気軽にご利用ください。

「プロパティアクセス 無料個別相談予約フォーム」はこちら
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

カテゴリー