[グローバル] 2023年世界の富裕層の移住先は?

2024/04/18


パンデミック期間中は、富裕層(HNWI)の旅行も通常より控えめで、移住するケースも減少傾向にありました。しかし、百万長者、億万長者とも呼ばれるHNWIは、再び移動を始めており、2023年に移住したHNWIは12万2,000人と予想されています。



ヘンリー・アンド・パートナーズ(Henley & Partners)のプライベート・ウェルス・マイグレーション・レポート(Private Wealth Migration Report)は、過去10年間にHNWIが移住した国を追跡したものです。ここでいう、HNWIとは、純資産100万米ドル(約1億5,000万円)以上の個人を指します。



2023年に多くのHNWIを迎え入れた国は、世界各地に分散しています。アジア・オセアニア地域からトップ10に入ったのは2か国、中東、ヨーロッパ、北米などです。



▼HNWIの流入・流出トップ20(出所:Henley & Partnersを元にPropertyAccess作成)
※2023年はレポート発行時の予想値




政情不安や経済の乱高下から自身と家族を守るために移住を検討する大富豪が増加する中、資本と人材を自国に呼び込もうとする世界各国の政府は、居住権や投資による市民権プログラムの導入など、利用可能な移住経路の幅を広げています。



歴史的に経済の課題を抱えるギリシャも、ギリシャは2023年に1,200人の富裕層を獲得すると予測されています。その理由のひとつは、同国のゴールデン・ビザ・プログラムであり、富裕層は最低25万ユーロ(2023年時点、2024年3月に25万ユーロ⇒50万ユーロに増額)の不動産投資をすることで居住権を得られ、そして最終的にはEUパスポートを取得することができます。



Visual Capitalistでは、経済的自由度が高く、税負担が緩やかであったり、投資が容易であったりする国が富裕層にとって魅力的だと述べられています。3,200人のミリオネアが誕生するシンガポールは、世界で最も経済的に自由な市場であると述べられています。



一方で、HNWIの流出も一部の国で加速しています。中国は2023年に13,500人の富裕層を失ったと予想されており、これは2位のインド(6,500人)の2倍以上です。



これらの国の多くでは、厳格な規制や腐敗した政府が、富裕層が自己資金の自由な管理を妨げています。ロシアでは、ウクライナ戦争の影響で、多くの富裕層が西側諸国からの個人的な関税や貿易制限を受けています。中国の香港に対する取り締まりから、香港はビジネスにとって魅力的な場所ではなくなってきています。また、英国のEU離脱により、多くの企業や個人が、欧州の国境を越えた業務をシームレスに行うための労働力、資金、投資を簡単に移動できないようになっています。



これらの国の中には、自国のHNWIが増えている国もありますが、千人単位でHNWIをネットで失うことで、経済にはかなりの影響があると考えられます。全体として、HNWIの移動はますます活発化しており、パンデミック中の減少を除いては、この10年間で年々増加しています。




富裕層の移動と不動産


キプロス、ギリシャ、マルタ、モーリシャス、スペイン、UAE、カリブ海諸国など、人気の高い国々では、投資による居住権や市民権プログラムが魅力的な不動産オプションを提供しています。



ヘンリー&パートナーズのCEO ユルグ・ステフェン博士は、国際不動産は常に信頼できる資産クラスであり、数十年にわたってリターンを提供し、富裕層がポートフォリオを多様化することで資産を守り、増やすことを可能にしてきたと述べています。



博士は、不動産連動型投資移住は、居住権や市民権と国際不動産という2つの望ましい資産を、一度に取得できるまたとない機会を提供する、と指摘しています。また、不動産は最も安定した長期投資の一つとして広く認識されているため、投資家の採算が取れる可能性が高いと言います。投資家は、所有者として、購入した不動産に住むことも、別荘として利用したり、賃貸して副収入を得ることもできるので、ユーロのような通貨高での賃貸収入は、通貨安の国からの投資家には特に魅力的に映るだろうと述べています。



博士は、投資を伴う移住は、移動は富裕層の資産計画商品として定着してきているも述べています。現在では世界中の多くの国が二重国籍を認めており、多くの政府が無借金の流動性を生み出す手段として、投資移住のオプションを再開、改良または新たに開発しており、買い手市場となっています。ここ数年、投資移住は、ますます多くの投資家にとって、自分の富と遺産を守るために、資産計画の主流商品となっていると締めくくっています。



(出所:Henley & Partners, Visual Capitalist

(画像:UnsplashのEyestetix Studioが撮影した写真)