[タイ] 2018年第3四半期バンコク・コンドミニアム市場

2018/11/16

[タイ] 2018年第3四半期バンコク・コンドミニアム市場

Colliers社が発表した2018年第3四半期のバンコク・コンドミニアム市場レビューをご紹介しましょう。

供給

四半期別、新規販売開始コンドミニアムユニット(2015年第1四半期~2018年第3四半期)
22,579ユニットと多くのコンドミニアムが2018年第3四半期に発売されました。この数値は、2018年第2四半期に新規発売されたユニット数をかなり上回る165%となり、過去数年間で最も高くなりました。新規発売ユニット数が大幅に増えた理由として、デベロッパー各社は、第4四半期を待たず、第3四半期の間にプロジェクトを完成させ、すべてのマーケティング活動を終えてしまおうとした傾向があげられます。第3四半期に発売したコンドミニアムプロジェクトのほとんどは、現在のマス・トランジット路線上にあります。

▼マス・トランジット地図(出所:Bangkok Mass Transit

▼【参考】MRT(メトロ)拡張プラン(出所:Wikipedia)

▼【参考】BTSスカイトレイン拡張プラン(出所:Wikipedia

これらのエリアでは、デベロッパーは平米あたり70,000~140,000バーツほどでユニットを販売でき、バンコクの購買力に見合った価格帯となっています。上場デベロッパーはバンコクにおけるコンドミニアム市場の主要なプレイヤーとなっています。実際、2018年第3四半期に発売したすべてのコンドミニアムユニットの76%が、上場デベロッパーによるものです。

発売したすべてのコンドにミニアムユニットのうち約45%が、現在建設中のマス・トランジット路線上(ブルーライン、グリーンライン、オレンジライン)にあります。2018年第1四半期から第3四半期のタイの全体的な経済状況はポジティブな傾向を見せていましたが、コンドミニアム市場の需要は伸び悩みました。売れ残ったユニットは36,000を超え、すべてのデベロッパーのメインの懸念材料となっています。

デベロッパー各社は四半期ごとに利益を上げなくてはならないため、プロジェクト発売を延期することはできませんし、まずは売れ残ったユニットを売りにかかりました。デベロッパー各社は、バイヤーを呼び込むべく、プロジェクトのデザインやコンセプトで差別化を図りました。たとえば素晴らしいルーフトップ設備や、大規模な施設などです。さらに、タイ人バイヤーに販売する前に、外国人バイヤーや投資家に販売することもこころみました。これらの努力により、過去数か月に発売したコンドミニアムプロジェクトの多くが、そのロケーションに見合った平均価格以上で販売することができたのです。

バンコクのコンドミニアム市場は、2018年成長を続けてきました。今後多くのマス・トランジット路線が加わることで、将来もこのまま成長を続ける見通しです。タイ人の需要は限定的ですが、外国人の需要は投資目的によるものなので、デベロッパー各社は外国人バイヤーに販売するときには注意が必要です。タイ銀行は、モーゲージローンに対する与信引受基準額を引き締める措置を発表しました*。

この新しいルールの下では、1,000万バーツ超の住宅に対して新規に設定するモーゲージについて、ローン・トゥ・バリュー(LTV:物件価格に対するローンの割合)は最大80%となっています。同様のLTV基準が、物件価格にかかわらず、2軒目の購入についても適用されます。また、銀行は物件価格を超える前払い金を支払うことを禁止されます。これは、今後の不動産業界に影響を与えうるでしょう。また、デベロッパー、バイヤー双方に懸念事項が発生します。この新ルールは、来年初に施行される見通しで、今年の第4四半期におけるコンドミニアム市場には影響しないとみられています。


需要

タイ商工会議所大学が行った調査に基づく、New Residence Buyers’ Confidence Index(新築住宅購入者信頼感指数)は、2018年1月~8月で74.6増となりました。過去43か月間で最高となっており、タイの長期的な経済状況への信頼感を反映しています。

2015年から2018年第2四半期までに発売したコンドミニアムユニットの平均成約率は約81%でした。2018年第3四半期に発売した新築コンドミニアムユニットは、合計22,579ユニットのうち約64%が販売され、上場デベロッパーによるプロジェクトでロケーションが良いものは、公式発売後たった数日で完売したものもありました。しかし、第3四半期に発売したコンドミニアムプロジェクトの中には、50%すら達成できなかったものもあります。これは、経済状況や購買力の問題だけでなく、ロケーションがあまり魅力的ではなかったり、そのエリアの平均販売価格を上回った価格設定だったりしたことがあげられます。タイでもよく名の通った上場デベロッパーにとって、外国人バイヤーは新しいターゲットグループとなっています。特に、スクンビット通り沿い、ラチャダーピセー通り沿い、およびCBD(中心業務地区)エリアのプロジェクトなどで顕著でしたが、建設中の新しいマス・トランジット路線上のエリアのプロジェクトを外国人に販売するデベロッパーもありました。


価格

2018年に発売した新築コンドミニアムの平均価格は、平米あたり約137,933バーツでした。前期と比較すると約26.4%増となっており、この理由としては、第3四半期に発売したコンドミニアムプロジェクトの多くが、現在のマス・トランジット路線上だったことがあげられます。過去1~2年で、新築コンドミニアムユニットの平均販売価格は、年間15~20%ほど上昇しており、ロケーションによってはこれ以上の値上がりを見せたところもあります。2018年、多くのデベロッパーは、販売価格が平米あたり70,001~150,000バーツのユニットの建設を主に手がけています。というのも、2018年第3四半期に発売したユニットのうち約53%が、マス・トランジット路線上に位置しているため、バンコク市内のよりよい接続性を提供できるからです。

販売価格が平米あたり200,000バーツ超のコンドミニアムプロジェクトの数は、2018年1月~9月で、2017年同期間の数を超過しました。バンコクのCBDエリアで販売開始されたプロジェクトもあれば、数年前に販売したプロジェクトの再販売もありました。2018年第3四半期に発売したコンドミニアムプロジェクトのほとんどが、平米あたり100,000バーツ未満で販売されているため、同期間のコンドミニアムユニットの平均販売価格は際立って高いものではありませんでしたが、2018年第2四半期よりは約11%増、前年同期では約8.6%増となりました。既存のマス・トランジット路線上のエリアだけでなく、建設中のマス・トランジット路線上のエリアにおいて、多くのコンドミニアムプロジェクトの平均販売価格は、過去のプロジェクト、ましてや数か月前に発売したプロジェクトよりもますます上がってきています。

(出所:Colliers

*タイ銀行のLTVに関する新ルールについてのPropertyAccess.coの記事を読む