シンガポールのREIT - 規模と市場

2018/06/18

シンガポールのREIT - 規模と市場

シンガポールのREIT

シンガポールにおけるREIT制度は、シンガポール金融庁(MAS)が発行した証券先物法(289章)、集団投資スキームに関する規定(「規定」)、規定に添付されている不動産ファンドガイドライン、所得税法により規定されます。不動産ファンドガイドラインは、不動産および不動産関連資産に主に投資する、もしくは投資を提案する集団投資スキームに適用されます。スキームは、シンガポール証券取引所に上場することも、しないこともできます。不動産ファンドを規定するガイドラインが最初にシンガポール証券取引所によって発行されたのは1999年5月です。しかし、シンガポールREIT(S-REIT)がシンガポール証券取引所に初めて上場されたのは2002年7月のことです。2017年7月時点で、36のREITがシンガポール証券取引所に上場されており、時価総額はおよそ790億シンガポールドル(約6兆5,000億円)です。

S-REIT市場は、過去数年で飛躍的に成長し、アジアでも有数の市場となりました。

S-REITの成長を加速したのにはいくつかの要因があります。規制面では、強固な枠組みと包括的な不動産ファンドへの投資ガイドラインが、S-REITセクターに自信を持たせました。税制面では、特定の所得クラスのためのフロースルー処置、特定国外所得の免税、不動産の譲渡にかかる印紙税の減免など、S-REITに対して魅力的な税の減免を与えるような内容に策定されました。

では、次にPwCの「Compare and Contrast - World Real Estate Investment Trust (REIT) Regimes (世界のREIT比較対照)」レポートより、シンガポールのREIT制度について見ていきましょう。

※2020年のシンガポール不動産マーケットはこちらの動画でも紹介しています。



■法的な形式
シンガポールでは、S-REITはユニット・トラストとしてみなされ、集団投資スキーム制度によって管理されます。

■資本金要件
上場S-REITは、上場する際には、発行価格ベースで少なくとも3億シンガポールドルの時価総額および発行済み株式資本がなくてはなりません。

■上場要件
上場するかしないかは自由ですが、税の減免を得るためには上場していることが必須条件となります。

■投資主にかかる制限
・シンガポール建ての上場REITは、資本金またはユニットの少なくとも25%が、最低500名の公募株主により保有されている必要があります。
・外国通貨建ての上場REITは、「株主スプレッド」の要件が満たされていなくてはなりません。

■非居住の投資主にかかる制限
非居住の投資主にかかる制限は特にありません。

S-REITになぜ投資すべきか?

Yahoo Financeの記事に、S-REITに投資すべき理由があげられていますのでご紹介しましょう。

■安全・安定
S-REITは、収益を得ることに焦点を置いた投資家にとっては、もっとも安全かつ安定した投資ツールといえるでしょう。シンガポールが金融・テクノロジーのハブとして少しずつ発展する中で、不動産価格もまた上昇傾向を続けることが期待されています。

これは、REITが不動産ポートフォリオから生む賃貸収入の上昇という形で結果が出てくるはずです。シンガポールのREITは収益の90%を分配金として分配しなければいけませんので、投資主は堅実なリターンが保証されるのです。
島国であるシンガポールは拡大するにも土地が限られることから、近い将来、需要は供給を上回るでしょう。その結果、物件価格の上昇につながり、REITがさらなる賃貸収入を生むことになるでしょう。投資主は、分配金はもとより、DPU(一口当たりの分配金)という点でもより多く収益を得ることができるでしょう。


■MAS規制
シンガポール金融庁は、シンガポールの実質的な中央銀行であり、シンガポールのREITを規制しています。金融庁は、S-REITの借り入れが、全資産の35%を超えないこと、格付け会社3社のうちの1社の信用格付けをもって、60%までしか借り入れすることができないことを定めています。

シンガポールのREITは、全資産価値の10%以上を新規投資に使うことが禁止されています。これらの規制は、すべて投資主の利益を守り、投資から最大のリターンを生むことができるように設計されています。

しかし、リート・マネジャーの中には規制を無視してREIT管理に走る者もいるので注意が必要です。


■高い利回り
シンガポールREITは、昨年の利回りが平均17.6%と、価値の生み出すといいう意味では、ストレーツ・タイムズ・インデックス(シンガポール証券取引所における株価指数)よりもいい結果を残しました。


■免税
他国とは異なり、シンガポールの不動産投資信託は、通常17%の法人税が免除されています。よって、分配可能利益の90%を分配金として分配することで、高い利回りを提供することができるのです。
REITの分配金は、リート・マネジャーがサインをする長期リースによる、安定した賃貸収入で確保されており、マネジャーは、バランスシートの保守的なレバレッジを採用することでよく知られており、これによりリスクも大幅に減らすことができます。
*詳細はシンガポール内国歳入庁のホームページ参照


■多様化
シンガポールREITは、投資ポートフォリオを多様化するユニークな機会を与えてくれます。シンガポールのREITは、一か所に集中することなく、投資主のリスクを分散させるように複数の不動産タイプを保有しています。工業団地から、ホテルやモール、病院まで、さまざまな不動産を保有していることで、投資主のリスクも分散することができます。


S-REITデータ

■主要インデックス

国名

QTD

1年

3年

5年

10年

シンガポール

-1.2%

21.5%

8.0%

4.5%

6.8%

(参考) 日本8.7%
3.8%
4.6%
1.6%
5.5%

(出所:S&P Dow and Jones Indices, Global Real Estate Report: First Quarter 2018、2018年3月末時点)

■S-REITトップ5

(出所:シンガポール証券取引所、2018年6月18日時点)

■S-REIT区分別

区分REIT数時価総額
(百万SGD)
直近利回り
(%)
予想利回り
(%)
YTDリターン(%)資産負債比率(%)NAV倍率(x)
オフィス819,257.2
6.26.3-5.337.10.93
商業施設1128,205.2
6.46.9-3.932.70.93
産業/物流1122,525.6
7.47.6-1.335.01.04
ホテル69,155.3
6.77.0-5.534.5
0.91
ヘルスケア22,674.5
5.65.6-3.836.11.43
データセンター11,851.35.75.90.137.4
1.43
その他11,480.9
7.27.38.135.11.07
4085,150.1
6.76.8-3.334.81.0

*YTDリターン:年初から現在までの投資口価格の変動と分配金を加味したリターンです。

(出所:OCBC WEELKLY REITs TRACKER


※本記事は、各種の信頼できると考えられる情報源から作成してお りますが、その正確性・完全性が保証されているものではありません。記事内に記載されている内容、数値、図表、意見等は、本記事執筆時点のものであり、今後予告なく変 更されることがあります。