[フィリピン] 2018年第3四半期レジデンシャル市場レビュー

2018/11/27

[フィリピン] 2018年第3四半期レジデンシャル市場レビュー


コリアーズのレジデンシャル市場レビューからいくつかトピックをご紹介しましょう。


ユニット続々完成

2018年第3四半期、新しいコンドミニアムプロジェクトの完成が相次ぎ、4,900ユニット以上が引き渡しされました。これは、2018年前半期に完成した1,700ユニットの二倍以上になります。1月~9月までの完成ユニット数はこれで6,600ユニットになります。コリアーズは、2018年第4四半期に完成予定のレジデンシャルタワーの状況からして、2018年全体の見通し9,600ユニットを達成しそうだとみています。

フォートボニファシオは、2018年第3四半期に完成したオフィススペースの65%を占め、サブマーケットをリードしました。これは、2018年第3四半期のコンドミニアムユニットの完成度合いにより補完されています。というのも、第3四半期に完成した新築ユニットの34%をフォートボニファシオが占めているからです。完成したレジデンシャルタワーには、アヴィダタワーズBGC34thストリート・タワー1およびタワー2、ヴァイスロイ・マッキンリー・ヒル・イーストタワーなどがあります。これらのレジデンシャルタワーにより、合計1,700ユニットがフォートボニファシオのコンドミニアムの在庫に加わりました。

ビジネスハブとして繁栄しつつあるベイエリアに完成したユニット数も多く、第3四半期に引き渡しがされたユニット数の26%を占めました。モナーク・パークスイーツおよびパーム・ビーチ・ヴィラズによりベイエリアのレジデンシャル在庫に1,200ユニット以上が加わりました。

マカティCBDは、メトロマニラの最大コンドミニアムサブマーケットの座をフォートボニファシオに奪われました。しかし、マカティの在庫も、プリメックス社のザ・ストラトスフィアおよびアルヴェオ社のクローマ・タワーの完成により増加、1,151ユニットが追加されました。

2018年第3四半期時点で、コリアーズによると、メトロマニラのセカンダリーレジデンシャル市場では113,700ユニットを記録、主なビジネスエリアをカバーしています。現在、レジデンシャル在庫数では、フォートボニファシオが最大で27%、マカティCBD(23%)、ベイエリア(16%)、オルティガスセンター(15%)となっています。2018年第3四半期に入ってから、ベイエリアがオルティガスセンターを抜き、今後マカティCBDなど他のビジネスハブも2021年までに追い抜くとみています。コリアーズは、その頃までにベイエリアの在庫数は29,500ユニット、マカティCBDの28,700ユニットを越えているだろうと予想しています。

2019年から2021年まで、年間8,300ユニットのコンドミニアムが完成するとコリアーズは予想しています。2021年までに、コリアーズはメトロマニラのセカンダリーレジデンシャルの在庫は、142,000ユニットに達し、2017年と比較して33%増になるとみています。コリアーズは、新築コンドミニアムユニット完成が加速した背景として、一部は中国のオフショアゲーミング会社からの絶え間ない需要によるところが一部あります。2016年第4四半期より、オフショアゲーミング会社が、フォートボニファシオが、ベイエリア、およびマカティCBDの3つの主要サブマーケットでオフィスを拡大してきました。この強い需要はレジデンシャルセクターにも流れています。というのも、オフィスの拡大とは別に、これらのオフショアゲーミング会社は、レジデンシャル面も充実していることを主な要件としているからです。


空室率はさらに減少

強い需要によりセカンダリーのレジデンシャル市場における空室率も改善しました。これにより、リース用であれ売却用であれ、主要なビジネスエリアで完成したユニットの契約が進んだということです。概して、メトロマニラの空室率は、2018年第2四半期の11.3%から10.8%とさらに減少しました。これで、4四半期連続で、マカティCBD、フォートボニファシオ、ベイエリアにおける空室率が減少しました。2018年末には、コリアーズはオフショアゲーミング会社と地元の会社員などからの強い需要により、空室率は11%程度になるとみています。これは、コリアーズが年初に予想していた、12~13%より下方修正したことになります。需要以外にも、コリアーズは空室率が下がった理由として、ユニットの引き渡しが遅れ気味であることも挙げています。同社は2018年の予想として12,400ユニットの引き渡しを見積もっていましたが、最新の予想で9,600ユニットに下げています。

オフショアゲーミング会社からの需要とは別に、コリアーズは、CBDで働くフィリピン人が月々の賃貸料を共同出資して、マカティ、オルティガス、フォートボニファシオなどの主要ビジネスエリアの周辺のコンドミニアムを賃貸している例も多く見ています。これが、特に周辺エリアのグレードBコンドミニアムタワーの低い空室率に貢献しています。働く若者でビジネスエリアに自分のアパートを所有したりコンドミニアムを借りたりする資金的な余裕がまだない人たちのための住まいに投資するデベロッパーも増えています。こういった労働者用のドミトリーは、オフィスの近くに住みたいと考える人たち用です。過去には、労働者ドミトリーの需要を満たしてきたのは、小規模な家族経営のデベロッパーでした。しかし、アヤラランドやSMインベストメントなどの国家規模のデベロッパーが、このセクターに乗り込もうとしています。


賃貸料はほぼ横ばい

▼ラグジュアリー3ベッドルーム平米あたり月額賃料(ペソ、カッコ内日本円)

ロケーション2018年第2四半期2018年第3四半期前期比(%)2019年第3四半期(予想)前年同期比(%)(予想)
フォートボニファシオ617~1,005
(1,333~2,171)
620~1,012
(1,339~2,186)
0.6%622~1,016
(1,343~2,195)
0.4%
マカティCBD540~1,080
(1,166~2,333)
548~1,090
(1,184~2,354)
1.1%550~1,094
(1,188~2,363)
0.3%
ロックウェルセンター728~1,020
(1,572~2,203)
738~1,035
(1,594~2,236)
1.4%741~1,039
(1,601~2,244)
0.4%

(Colliers International Philippines Researchを元に作成、換算レート1ペソ=2.16円)


マカティCBDの3ベッドルームの平均賃料は、前期比で1.1%増、フォートボニファシオとロックウェルの賃料は、それぞれ0.6%、1.4%の増加でした。今後12~36か月、賃料の大きな上昇はないとみています。とうのも、この期間に相当数の新築コンドミニアムユニットがメトロマニラで完成予定だからです。2019年から2021年、コリアーズは、マカティ、フォートボニファシオ、およびロックウェルの3ビジネスエリアにおける賃料増加は横ばいもしくはわずかだという見通しを変えていません。今後3年間の賃料増加は、年間0.3~0.4%とみています。


コンドミニアム価格は上昇中

▼ラグジュアリー3ベッドルーム平米あたり価格(ペソ、カッコ内日本円)

ロケーション2018年第2四半期2018年第3四半期前期比(%)2019年第3四半期(予想)前年同期比(%)(予想)
フォートボニファシオ118,000~252,000
(25,500~54,400)
124,000~264,000
(26,800~57,000)
5.0%127,000~272,000
(27,400~58,800)
3.0%
マカティCBD121,000~301,000
(26,100~65,000)
125,000~313,000
(27,000~67,600)
3.8%129,000~322,000
(27,900~69,600)
2.8%
ロックウェルセンター199,000~246,000
(43,000~53,100)
208,000~250,000
(44,900~54,000)
2.9%215,000~258,000
(46,400~55,700)
3.2%

(Colliers Internationa Philippines Researchを基に作成、換算レート1ペソ=2.16円)


資本価値は引き続き上昇しており、セカンダリー市場における3ベッドルームの平均価格は、2018年第3四半期時点で、平米あたり124,000ペソ~313,000ペソ(268千円~676千円)でした。フォートボニファシオのユニットは、2018年第3四半期最も急速に価格が上昇し、上昇率は5%、続いてマカティCBDが3.8%、ロックウェルセンターが約3%でした。2019年から2021年の間に、コリアーズは主要3ビジネスエリアにおけるコンドミニアム価格の上昇は年間2.8%~3.2%とみています。


プレセールによる成約数がスペースを維持する

▼メトロマニラ・レジデンシャル販売数および成約数(単位:千ユニット)


2018年第1~第3四半期で、プレセールは約42,000ユニットに到達、2017年同期の38,000ユニットから増加しました。現状の傾向からすると、2018年のプレセールによるコンドミニアム成約件数は、2017年にメトロマニラで販売された53,000ユニットを超えるでしょう。

コリアーズは、政策金利の上昇はマーケットにすぐには効いてこないとしています。というのも、150ポイントの金利上昇(11月15日時点最新では175%)は、まだ国内市場が吸収できる範囲内だからです。銀行もまた競争力を維持すべく低金利を続けています。したがって、デベロッパーは、消費者の月々のモーゲージローンの支払い能力を警戒していません。

(出所:Colliers



フィリピン中央銀行の翌日物借入金利ー2018年の動き

日付

政策金利

増減(ベーシスポイント)

2月8日

3.0%

据え置き

3月22日

3.0%

据え置き

5月10日

3.25%

25

6月20日

3.5%

25

8月9日

4.0%

50

9月27日

4.5%

50

11月15日

4.75%

25

(出所:フィリピン中央銀行