[フィリピン] 2023年第3四半期メトロマニラのオフィス空室率わずかに上昇

2023/12/25


総合不動産サービス会社コリアーズ・フィリピンによると、メトロマニラでは、2023年第3四半期の新規オフィスビルの竣工と退去スペースの急増により、オフィスの空室率がわずかに上昇しました。



コリアーズは、引き続き、昔ながらの企業やアウトソーシング企業による、「質への逃避」と「コストへの逃避」を織り交ぜた取引案件が見られると述べています。



今年1~9月のマニラ首都圏以外のオフィス取引の伸びは横ばいでした。セブ、パンパンガ、ラグーナが成約件数の大半を占めました。



コリアーズは、今後、マニラ首都圏以外の主要エリアでは、入居企業が地方の中枢都市が抱える優秀な人材プールとインフラ網を最大限に活用することで、事業拡大の機会が拡大するとみているようです。



コリアーズは、入居企業に対して、選択肢に柔軟性を持たせたワークプレイス戦略を実施するよう奨励しています。一方で、家主に対しては、質と価格のバランスを見ながらのFlight-to-Value(価値への逃避)策を検討している企業の需要を取り込むために、柔軟な賃貸条件を提示するように提言しています。さらに、テナントの「環境、社会、ガバナンス(ESG)」、「多様性、公平性、インクルージョン(DE&I)」の目標に沿いながら、テナントのオフィス復帰の動き(RTO(Return-to-Office))をさらに支援する、革新的なプログラムを実施し続けるべきだとも述べています。



職場における持続可能性と包括性の重要性が高まる中、コリアーズは、家主がESGやDE&Iの要素をビルのアメニティや共有スペースに積極的に導入し、推進することを奨励しています。例としてあげられるのは、環境に配慮した設備や認証の取得、景観のための造園設計、共用施設の改修、従業員のウェルネスや生産性をサポートする家主主導のイベントなどです。



また、テナント・エンゲージメント活動の重要性についても指摘しています。企業が従業員の職場復帰を奨励している今、家主は、従業員の福利厚生を促進するテナント参加型のイベントなどを通じて、職場復帰の魅力を再燃させる役割を担っていると指摘しています。



コリアーズの2023年第3四半期のデータによると、いくつかの企業が品質/コスト戦略を実施しました。



例えば、フォートボニファシオ、マカティ中心業務地区(CBD)、オルティガスCBDでスペースを確保した従来型の企業やアウトソーシング企業があります。これらの企業は、テナント寄りが続く市場を利用し、主要ビジネス地区で新規の優良なオフィススペースを低い賃料で賃貸する機会を最大限に活用する形となりました。



コリアーズは、現下の市況を踏まえると、パンデミックがもたらした賃料の低下を利用して、テナント企業が低コストで質の高いオフィスへの逃避(flight-to-quality)戦略を実行する機会がまだまだ残っていると述べています。



特に、新規の優良オフィススペースが大量に供給される立地でスペースを確保するなら今がチャンスだと指摘しています。コリアーズは、現在の空室ストックと今後1年以内に竣工予定の新しいオフィスタワーを考慮すると、フォート・ボニファシオとオルティガスCBDのオフィススペースを検討するのが良いだろうと述べています。



また、「価値への逃避」戦略や、既存のオフィススペースの合理化の観点から、フレキシブルなワークスペースの検討についても提案しています。コリアーズは、2023年、2024年とオフィス空室率の高止まりが続くことを予想しており、賃貸契約満了前に不動産戦略を見直すのがよさそうだとも述べています。




(出所:Business World Online

(画像:Unsplashのcharlesdeluvioが撮影した写真)