フィリピン不動産の物件価格推移と不動産投資にかかる諸費用

2018/02/05


この記事のポイント

フィリピンの首都圏では、特にコンドミニアムの価格が上がっている。
フィリピン不動産の取引では、売主が諸経費の多くを負担する。
日本とフィリピンとで比較すると、フィリピンの方が諸経費は少なくて済む。



フィリピンの不動産価格推移


フィリピンの不動産は、過去一時的に急落した時期があったものの、近年では長期的に右肩上がりで価格が上がっています。ただし、エリア・人気・面積などによって価格が大きく異なるので、注意して比較検討することが重要です。

フィリピンでは、人口増加や経済発展に伴って不動産価格が上がっています。フィリピン全体の不動産価格は、2014年以降2020年第1四半期までの間に、約1.35倍まで上がりました。

特にコンドミニアムは値上がり傾向が顕著で、2014年から2020年第1四半期までの間に、約1.8倍まで上がっています。過去、フィリピンの不動産は2008年〜2009年に一時的に価格が急落しました。しかし、それ以降は長期的に見ると右肩上がりで推移しています。


出所:Bangko Sentral ng Pilipinas(フィリピン中央銀行)


フィリピン全体では不動産価格が上がっていますが、ロケーション・大きさ・状態および特徴によって価格が大きく異なります。例えば、マニラ首都圏の場合、人気のエリアに立地しているかどうかも非常に重要なポイントです。

オルティガス・センターとロックウェル・センターは、車で10分ほどの距離です。しかし、ロックウェル・センターにある小さなコンドミニアムは、オルティガス・センターで同等のコンドミニアムと比較すると、2倍の値段がついていることもあります。

また、エリアと価格帯にも注意が必要です。ハイエンドなコンドミニアム市場の一部は、特にマニラでは停滞の兆候を見せています。



 出所:TransferWise



フィリピン不動産の購入にかかる諸費用


フィリピン不動産の購入にかかる税金など諸費用は、他の国と比較すると安いです。例えば、エージェント費用が売り手負担であるなど、買い手の負担が軽い負担区分になっています。諸費用の詳細について解説します。



デポジット/頭金


フィリピン不動産は、売買契約時にデポジットの支払いが必要です。購入価格の10~30%がデポジットとなります。契約者がフィリピン国内にいない場合は、デポジットの金額に相当する国際送金が必要です。通貨の異なる高額の送金を行う場合は、為替レートが大きく影響してくることに注意しましょう。



税金および費用


購入価格には、さらに税金や様々な料金が乗ってきます。しかし、フィリピンでは、料金の多くは売り手が負担することになっていますので、物件を購入するのはそこまで高くつきません。しかし、最終的にその物件を売却することにしたら当然かかってくる費用になります。これらの税金および料金には次のものが含まれます。





印紙税


特定文書にかかる印紙税は、約1.5%で、物件の売却価格または公正市場価値のいずれか高いほうに課されます。



公証人費用


公証人費用は、一般的には物件価格の1%から2%ですが、交渉可能です。



地方譲渡税


地方譲渡税は、地方では物件の0.50%、マニラ首都圏の市および自治体では物件の0.75%が課されます。



登録費用


売却価格に対し累進的に計算されます。具体的な費用については、フィリピン土地登記庁のウェブサイトをご確認ください。


▶フィリピン土地登記庁のウェブサイト



キャピタルゲイン税


キャピタルゲイン税は、資本的資産とみなされる不動産を売却または譲渡する際に課される取引税です。キャピタルゲイン税は、対象となる物件の総売却価格または公正資産価値のいずれか高いほうの6%が課されます。



不動産エージェント料


通常、不動産エージェント料は不動産価格の約3%~5%です。物件の所有権登記も不動産エージェントの対応範囲内となります。なお、コミッションを支払えば登記費用は追加でかかりません。

なお、こちらの記事ではフィリピン不動産を購入する時の注意点について解説しています。併せてご参照ください。


▶日本人がフィリピンで不動産を購入する時の注意点



日本とフィリピンとの諸経費の違い


フィリピン不動産の購入にかかる諸経費は、日本の不動産購入と何が違うのか、日本の不動産購入にかかる諸経費と比較してみます。日本では仲介手数料と不動産取得税だけで物件価格の7%諸経費がかかるため、そのほかの経費と合わせると、物件価格に対して10%程度は諸経費が必要です。


なお、日本で新築物件を購入する場合は、諸経費とは別に、建物価格に対して10%の消費税(2020年時点の消費税率)が課税されます。個人が売主の中古物件を購入する場合は、消費税は非課税です。フィリピンでは、買主の諸経費負担は物件価格の4%〜5%程度で済むので、日本とフィリピンとの比較では、諸経費はフィリピンの方が安いです。



仲介手数料


仲介手数料は取引を仲介する不動産会社に支払う手数料です。フィリピン不動産でいうところの不動産エージェント料に該当します。日本の不動産取引にかかる仲介手数料は以下表の通りです。実際の金額としては、日本とフィリピンとでそれほど大きな違いはありません。


◯仲介手数料=(取引価格×3%+6万円)+消費税



融資手数料


融資を利用する場合には、金融機関に対して手数料を支払います。融資手数料は金融機関によって異なり、融資金額に対して3%など定率で課される場合と、一律で3万円など定額で課される場合とがあります。



手付金


日本の不動産売買では売買契約締結時に手付金を支払うのが通常です。フィリピン不動産でいうところの頭金(デポジット)に該当します。手付金の金額は売買契約の内容次第ですが、5%〜10%程度に設定されるのが通常です。フィリピンでは10%〜30%程度に設定されるため、フィリピンでは日本よりも頭金が高く設定されています。



登記費用


日本の不動産売買では、所有権移転登記を進めるにあたって、司法書士の報酬と登録免許税がかかります。報酬は司法書士によって異なるほか、登録免許税は土地または建物ごとに発生します。フィリピンでは、不動産エージェント料を支払えば報酬は発生しないので、登記に関しては、日本は費用が多いです。

※参照:国税庁



印紙税


日本でも売買契約書に貼付する収入印紙に印紙税が課税されます。印紙税が発生する点では日本の不動産もフィリピンの不動産も同じです。例えば1,000万円の物件を購入すると、フィリピンでは15万円の印紙税がかかりますが、日本では1万円で済みます。


※参照:国税庁



不動産取得税


日本で不動産を購入すると、地方自治体ごとに不動産取得税がかかります。税額は固定資産税台帳に記載の評価額に対して4%です。



火災保険料


日本では、入居者側で火災保険を付保することも多いですが、入居者とは別にオーナー側でも加入しておくほうが安全です。融資を利用する場合は、金融機関から加入を義務付けられます。フィリピンでは物件ごとに加入義務の有無が異なりますが、可能な限り加入しておくほうが安全です。



フィリピン不動産の投資運用にかかる諸費用


フィリピン不動産の投資運用中にかかる諸費用は、表の通りです。



また、上記の費用以外にも個人所得税がかかります。外国籍の居住者もしくは年間180日以上滞在した非居住者には、収入に対して0%〜35%が源泉徴収されます。滞在期間が年間180日未満の非居住者に対する税率は収入の25%です。



日本の不動産投資運用にかかる諸費用


投資運用にかかる諸費用についても、日本とフィリピンとで比較してみます。日本の不動産投資運用中にかかる諸費用は、表の通りです。



投資運用中の費用については、日本とフィリピンとで費目に大きな違いはありません。日本でも家賃収入に対して所得税が課税されますが、例えばサラリーマンなどの場合は給与所得と損益通算して課税されます。